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毛利俊夫の観光夜話  >>  No.1 観光政策再考(2010年1月8日)


 観光庁ができ、また中央、地方問わず多くの政治家が観光立国という言葉をばらまく一方、具体的な施策となると、ホームページを作るとか、東京へ誘致キャラバンを送るとかの非常に矮小化したものがほとんどである。地方都市における観光産業のあり方、あるいは、そもそも観光とは何か、というような原点の議論に基づく戦略的施策はほとんど見あたらないということができる。

 観光の対象として歴史的遺産とか自然・風景を考えるが、そこには現在の生活者、すなわち住民の存在が忘れられているのではないだろうか。我が国で世界的に有名な観光地といえば京都であるが、京都の魅力はその歴史的遺産が現在の生活のなかに生きているからである。京都のように有名な観光地でなくても、たとえば地方都市に見ることができる「朝市」でも同じである。有名になった朝市ではあまりにも観光的になったとして地元客離れが起こり、また観光客を主たる顧客とするようになった朝市には観光客も次第に魅力を感じなくなり、結果として朝市の規模縮小が起こっている地域がある。

 観光地として魅力があるかどうかは、そこに現在の生活者の様々な活動があるかどうかにかかっているといってもよい。それがゆえに政策として明確な観光戦略を確立することができないのではないだろうか。財・サービスの供給者を機能別に分類する行政システムでは、複雑な生活行動を対象とする観光を一元的に組織化することはできないのである。

 生活者の生活行動に観光の原点を置くと、観光政策の原点も地方・地域となる。歴史的、地理的背景のなかで生活者の行動の一部が観光の対象になるのである。その生活行動が魅力であるほど、広域から観光客を集めることができると考えることができる。

 このような観点から観光政策を見直すと、地域住民が疎外されたり、生活から遊離した観光施策が意外と多いのではないだろうか。言い換えれば、地域住民を主たる顧客とした観光政策という視点が必要とされているのである。

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