毛利俊夫の観光夜話 >> No.2 地方都市が魅力ある都市になるためには!(2010年1月22日)

地方都市にとって観光振興は今に始まった重要政策課題ではないが、とくに最近は観光振興が話題になる。その理由は地域によって異なることは当然だが、地域単独で必要となる様々な社会インフラの整備がほとんど完了したことと関係はないだろうか。言い換えれば、さらに建設投資を続けるためには、地域外の需要をあてにしなければならないのである、といっても言い過ぎではない。しかしここではそれらの投資の必要性、あるいは投資効率を問題にするのではなく、様々な建物・施設などの地域における配置が地方都市の最大の問題であることを提議したい。
地方都市のほとんどがシャッター通りと呼ばれる中心地域の空洞化に悩まされているが、その主たる理由を郊外ショッピングセンタなどの大型小売機能の出現に求めることが多い。しかし中心市街地の衰退を招いた最大の理由は行政の施策にあるのではないだろうか。
地方都市で最大の雇用力があるのは行政組織であり、また集客力があるのは学校などの教育機関や病院である。そして郊外化の先陣を切ったのもこれらの組織である。また、地方都市で顕著であるのが様々な施設の立地が域内に均等に分散立地していることである。かなり小さな地方都市でも複数のコミュニティから構成されることが多く、公的施設はこれらコミュニティに順番に建設するのが一般的である。このような立地計画は経済効率とか都市計画の視点ではなく、完全に政治的視点に立つものである。
すなわち、地方都市の都市計画は明確な中心核を作ることなく平面的な街づくりをしたものと判断することができる。このような街づくりには施設計画はあっても、人間の交流、とくに非目的的な交流という視点が全く欠けていると判断することができる。観光行動を考えた場合、名所・旧跡などの魅力も重要であることは言うまでもないが、それ以上に人々を惹きつけるのは、非日常の場所で、日常的でない人々、すなわち、見知らぬ人々との交流である。日常の場所で日常的な人々が交流する姿が観光の対象になるといえよう。朝市で有名な観光地が、あまりにも観光客中心の朝市になり、地元の人々の支持を失い、結果として観光客も魅力を感じなくなり、朝市の存続自体が危うくなった例は、観光には日常と非日常の交流が必要であることを物語っている。
このように考えると、地方都市の再建と観光振興には共通する側面があることが分かる。すなわち、地方都市からなくなった中心地域の界隈性を復活することが最重要であり、そのためには地元の人々が集まる必然性を感じる様々な施設を非常に狭い地域に集め、さらに朝市などのイベントを中心地域で行う、などの息の長い施策が必要であろう。
Copyright(c) Mori & Associates 2010- All Rights Reserved.
|